漁業権、漁業調整規則 伊勢海老釣りに関する法律及び規則【重要】

密漁とは

よく伊勢海老釣りをすると言うと、「それ密漁なのでは?」「犯罪なのでは?」などと言われる事が多々ありますが密漁とはなんなのでしょう?
海での遊びとしてよく行われる釣りや潮干狩りは、誰でも、いつでも、どこでもやっていいというわけではなく、無秩序に魚などが取られれば水産資源の枯渇に繋がるため、海などで魚や貝を捕る行為には国際間の協定や法令があり、国や都道府県が様々なルールを定めています。このルールを犯して魚介類をとることを密漁と言いますが、どんな法令が伊勢海老釣りに関係してくるのか詳しく見ていきましょう。

漁業権とは?

漁業権は漁業法の中で定められた最も重要な規定で、一定の漁場において一定期間、他を排して漁業を営む権利になります。
「共同漁業権」「定置漁業権」「区画漁業権」の3種類があり、都道府県知事の免許が必要です。

  1. 共同漁業権は、一定地域の漁民が一定の水面を共同に利用し、免許で定められた漁業を営む権利です。県内では、遠州灘の一部を除き、沿岸全域に設定されており、それぞれの地先を管轄する漁業協同組合に免許されています。 
  2. 区画漁業権は、魚類、のり、わかめ、かき等の養殖を行うため、一定の区画水面に施設(いけす網、のり、わかめ網、かき棚等)を敷設することを認める権利です。主なものでは、魚類養殖いけすが熱海市網代及び沼津市内浦に、のり、かき養殖施設が浜名湖に、わかめ養殖施設が各漁協地先に設置されています。 
  3. 定置漁業権は、魚類採捕のため、海面に漁具を定置して漁業を営むものに免許されるもので、魚類の入網を促すために設けられた保護区域を含めて比較的広い水面が設定されており、伊豆半島沿岸域と由比、焼津、小川地先に設置されています。

静岡県共同漁業権(漁業権対象種)一覧表

共同漁業権の免許を受けた者(漁業権者)と漁業名称(漁業権対象種)は下表のとおりです。漁業権者以外の者が、漁業権対象種を採ると漁業権侵害により罰せられることがあります。

免許番号漁業権者漁場の位置漁業の名称(漁業権対象種)
共第1号いとう漁協大熱海漁協熱海市(初島を除く)地先いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、ばていら、かき、たこ、なまこ、うに、はばのり、わかめ、ひじき、のり、てんぐさ
共第2号初島漁協熱海市初島地先いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、ばていら、なまこ、のり、てんぐさ
共第3号いとう漁協伊東市地先いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、ばていら、くぼがい、くまのこがい、かき、あさり、はまぐり、たこ、なまこ、うに、はばのり、わかめ、かじめ、あらめ、ひじき、のり、てんぐさ、ふのり、つのまた、とさかのり
共第4号伊豆漁協東伊豆町、河津町地先いせえび、かめのて、あわび、とこぶし、さざえ、ばていら、くぼがい、たこ、なまこ、うに、わかめ、かじめ、あらめ、ひじき、のり、てんぐさつのまた、とさかのり
共第5号伊豆漁協下田市地先いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、ばていら、はまぐり、たこ、なまこ、うに、はばのり、わかめ、かじめ、あらめ、ひじき、ほんだわら、のり、てんぐさ、ふのり、つのまた、とさかのり、おおば
共第6号伊豆漁協下田市、南伊豆町沖合いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、なまこ、てんぐさ、とさかのり
共第7号伊豆漁協南伊豆町地先いせえび、ふじつぼ、かめのて、あわび、とこぶし、さざえ、ばていら、くぼがい、くまのこがい、はまぐり、たこ、なまこ、うに、もずく、はばのり、わかめ、かじめ、あらめ、ひじき、ほんだわら、のり、てんぐさ、ふのり
共第8号伊豆漁協松崎町地先いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、ばていら、はばのり、ひろめ、ひじき、のり、てんぐさ
共第9号伊豆漁協西伊豆町仁科、田子地先いせえび、あわび、とこぶし、ばていら、たこ、なまこ、うに、もずく、はばのり、ひろめ、かじめ、あらめ、あんとくめ、ひじき、のり、てんぐさ、ふのり
共第10号伊豆漁協西伊豆町安良里、宇久須地先いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、ばていら、なまこ、ひじき、のり、てんぐさ
共第11号伊豆漁協伊豆市地先いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、ばていら、くぼがい、あさり、たこ、なまこ、うに、かじめ、あらめ、ひじき、のり、てんぐさ、つのまた、こめのり
共第12号戸田漁協沼津市井田、戸田地先いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、ばていら、くぼがい、たこ、なまこ、あらめ、のり、てんぐさ、つのまた
共第13号沼津我入道漁協田子の浦漁協内浦漁協静浦漁協沼津市(井田、戸田を除く)、富士市地先いせえび、あわび、さざえ、たこ、なまこ、はばのり、わかめ、ひじき、のり
共第14号由比港漁協静岡市清水区(旧庵原郡)地先いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、たこ、なまこ、わかめ、あらめ
共第15号清水漁協静岡市清水区(旧清水市)地先いせえび、あわび、さざえ、あさり、なまこ、はばのり、わかめ
共第16号清水漁協静岡市駿河区地先いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、かき、なまこ、わかめ、かじめ、あらめ
共第17号焼津漁協小川漁協大井川港漁協焼津市地先いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、かき、なまこ、うに、わかめ、かじめ、あらめ
共第18号南駿河湾漁協吉田町、牧之原市、御前崎市地先いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、きさご、かき、はまぐり、たこ、なまこ、いわむし、あかむし、はばのり、わかめ、かじめ、あらめ、つのまた
共第19号南駿河湾漁協牧之原市沖合いせえび、あわび、とこぶし、さざえ、たこ、なまこ、かじめ
共第20号浜名漁協浜名湖内あさり、はまぐり、すじあおのり、

共同漁業権のエリア確認の仕方

共同漁業権のエリアの確認は、海上保安庁が公開しているデータベースCeisNet(シーズネット)でチェック出来るので、自分の行く釣り場に共同漁業権が指定されていないか確認しましょう。

左側のタブを開きメニューから水産>漁業権>共同漁業権を選択します。
すると地図上に黄緑色の線が引かれたのが共同漁業権の指定がある水面です。地図上の自分が確認したい位置をダブルクリックするか、ドラッグ&ドロップと右側のスクロールバーで地図を移動拡大させながら目的位置を確認します。
確認したい黄緑色の線の囲いの中をクリックするとその水面に指定された共同漁業権が表示されます。この中の第一種共同漁業権に伊勢海老等の項目がある場合は残念ながら伊勢海老釣りは出来ません。

漁業権侵害の罰則

漁業権又は組合員行使権を侵害した者は、権利者の告訴により100万円以下の罰金に処すると定められています。(漁業法195条)
違反した場合には、警察や海上保安部などに書類送検または逮捕される可能性があります。

漁業調整規則とは?

漁業調整規則は、漁業法と水産資源保護法に基づいて各都道府県が定めている規則ですが、都道府県によって魚の種類などの事情が異なるため、使っても良い漁具や漁法、捕ってはいけない魚や貝のサイズ、禁止区域や期間などがそれぞれの都道府県により細かく定められています。

遊漁者の皆さんが使用できる漁具、漁法は、次のものに限られています。(静岡県漁業調整規則第46条の2)

  1. たも網又はさで網1
  2. やす(水中眼鏡を利用する場合を除く。)①
  3. は具(火光又は水中眼鏡を利用する場合を除く。) 
  4. くまで(幅15センチメートル以下のものに限る。) 
  5. 投網(船舶を使用する場合を除く。) 
  6. さお釣又は手釣(から釣を除く。)②
  7. 徒手採捕 
  8. ひき縄釣③

①火光(照明等のあかり)を利用してたも網、さで網、やすを使用する場合は、静岡海区漁業調整委員会の承認がなければできません。
②船舶によりまき餌を使用してさお釣・手釣を行う場合は、1仕掛けにつき、まき餌かご1個、まき餌かごの大きさは直径5センチ、長さ15cm以下のものに限ります。
③ひき縄釣(トローリング)を行うには、静岡海区漁業調整委員会の承認がなければできません。地域振興につながる催しとして行われるものが承認の対象となります。

水産資源を守るための禁止及び留意事項

  • 爆発物を使用して水産動植物をとってはいけません。(水産資源保護法第5条) 
  • 有毒物を使用して水産動植物をとってはいけません。(水産資源保護法第6条) 
  • 水産動植物に有害な物を捨てたり、漏せつしてはいけません。(漁業調整規則第34条) 
  • 水産資源保護法により指定された保護水面の区域で水産動植物をとってはいけません。(漁業調整規則第35条) 
  • 下の表のものをとってはいけません。(漁業調整規則第36条、37条抜粋) 
名称禁止期間
あわび*10月1日から12月31日まで
いせえび*5月15日から9月15日まで
てんぐさ*11月1日から翌年3月31日まで
しらす1月15日から3月20日まで
さくらえび6月11日から9月30日まで
ぼら(当才に限る)*1月1日から7月31日まで
あゆ10月1日から翌年5月31日まで
名称大きさ
いせえび*眼の付け根から尾端まで13cm以下
あわび*殻長11cm以下
とこぶし*殻長5cm以下
さざえ*殻蓋の径3cm以下
うなぎ全長13cm以下
真珠貝殻長6cm以下
はまぐり*殻長3cm以下
あさり*殻長2cm以下
ぶり全長15cm以下

地域により漁業権対象種になっています。(共同漁業権一覧表参照)

  • 潜水器(アクアラング等の容器を直接身に付けて行う簡易潜水器を含む)を使用して水産動植物をとってはいけません。(漁業調整規則第39条)

漁業調整規則の罰則

漁業調整規則には罰則が定められており、罰則の内容は、都道府県ごとの規則や事案によって異なります。
静岡県の漁業調整規則では、禁止区域で魚などを捕った場合の罰則は下記の通りです。
「6月以下の懲役若しくは10万円以下の罰金に処し、又はこれ を併科する。」(静岡県漁業調整規則第57条)
違反した場合には、警察や海上保安部などに書類送検または逮捕される可能性があります。

伊勢海老釣りに関する法律及び規則まとめ

伊勢海老釣りに関連する法律的には、まずは漁業権の中の共同漁業権が該当します。共同漁業権はあくまでも一定の水面利用についての権利なので、特定の海域(場所)について定められた権利です。
なので共同漁業権の設定されていない海域についての制限はしておらず、共同漁業権の設定の無い海域での伊勢海老釣りについては漁業権の侵害にはなり得ません。

次に漁業調整規則ですが、これは各都道府県が定めている規則なので都道府県毎に違いがありますので、ご自身の住んでいる県の規則を良く調べて下さい。
静岡県の漁業調整規則では、伊勢海老の禁漁期間は5月15日から9月15日までと定められており、この期間は漁師も伊勢海老を捕る事は出来ませんので、一般の釣り人がこの期間に伊勢海老を捕ると処罰の対象となります。また、資源保護の観点から伊勢海老の大きさにも規定があり、眼の付け根から尾端まで13cm以下のものを捕ると処罰の対象となります。

※この記事は私が自分で知り得る知識で書いたものです。自分で海上保安庁、警察署、県の水産課にも伊勢海老釣りが違法でないかの確認してはいますが保証するものではありません。地域によってもルール等違う事もあるので、ご自身で各公共機関へ確認の上、伊勢海老釣りを楽しんで下さい。

コメント

  1. ヨッシー より:

    親切な説明ありがとうございます。
    伊勢エビやってみたいと思いシーズネット見てみました。
    御前崎に緑の線ではなく紫で囲まれているところがありましたがここは伊勢エビ釣りokということになるのでしょうか?
    不躾な質問で申し訳ございません。

    • ふく より:

      シーズネット上で余分なレイヤーを選択しています。
      左メニューのレイヤー設定で余分なレイヤーをゴミ箱マークで消してから、水産→漁業権→共同漁業権のみをレイヤー選択して下さい。
      これで共同漁業権が設定された海域のみ緑色の線で囲まれている筈ですので、そちらからご確認下さい。